「それでもボクは、君を愛してるよ。」
 ”やめろ。”
 「・・・・・・ボクは・・・キ・・・ミ・・・・」
 ”やめろ!!”

 『私は、まだお前の呪いが解けないのだ    。』


 スネイプは、生徒達の中に作り終えていない者が居ないと確認すると、

 「でわ。各々作った薬を班の者と交換して飲むのだ。」

 ハリーはギクリとした。そして自分の耳を疑った。

 だが、今聞いた事が幻聴ではない事は、ネビルとドラコの顔を見れば確かだった。

 自分のならばとにかく、いや、百歩譲ってドラコのもよしとしよう。

 でもネビルのは、眼鏡が壊れていてコップの中身が良く見えなくても、

 平気で飲めるモノだとは思えないだろう。

 ネビル自身は、魔法薬学は不得意では無いが、ごくごく稀に大きなミスをする。

 寮が大きな原点を食らうほどの大ミスだ。

 ハリーはネビルの作った薬で1度、物凄くお腹を壊した時があった。

 その他にも、いつぞやはシェーマスの鼻が象の様に伸びてしまった時もある。

 とにかくそれ以来、ネビルは間違いの無い様に猛勉強をしていた。

 そして周りは、なるべくネビルの魔法薬には触れない様にした。

 その避け続けたものが、今まさにハリーに着きつけられていた。

 ネビルの前に置かれたゴブレットの中身が、眠り薬ではありえない煙を立ち昇らせていた。

 ハリーの視線がドラコのゴブレットに注がれる。

 それに気付いたドラコが素早くハリーのゴブレットを掴み、

 「ボクはロングボトムのは飲まないぞ!ボクはお前のを飲むんだからな!!」

 ハリーは毒薬でも入れておけば良かったと思った。

 ハリーは何とか眠り薬を飲まなくても言い様に仕向けようと、必死に策を考えた。

 「ス、スネイプ先生!今眠り薬を飲んでしまったら、午後の授業は皆出られなくなってしまいます!」

 ハリーは、必死で訴えた。

 スネイプはそれに、口の端を上げてニヤリと笑って答えた。

 「それはありえん事だよMr,ポッター。全員が眠り薬を飲んで眠ってしまえば薬は成功だ。

  確認後には直ぐに私が目覚めの魔法をかける。故に、午後の授業に出られぬ訳が無いのだよ。」

 ”どうかね?判っただろう?”

 と言う様に片眉を上げ、スネイプは自分の机に戻り叫んだ。

 「諸君、早く交換したまえ!」

 スネイプの怒号で教室中がザワザワと、ゴブレットを急いで交換しあっていた。

 スネイプは、これ以上何人の意見も聞かない体制だった。

 「あの、ハリー・・・。これ。。。」

 ネビルがおずおずと自分のゴブレットをハリーの前に置いた。

 ハリーは仕方なく自分のゴブレットをネビルに押し付けた。

 ゴブレットを覗き込むと、更に異様なモノを見た気がした。

 喉をゴクリと鳴らして、つばを飲み込む。

 「飲みたまえ。」

 スネイプの静かな声を合図に、ハリーは息を止めて中身を飲み干した。

 直ぐに猛烈な眠気が襲い、ハリーは床に落ちそうになる自分の体を寸での所で

 机に倒れこむ事で助けたが、机に顔が勢い良く突っ伏したところでハリーの意識は途切れた。

 教室に生徒の寝息が微かに響いていた。

 それを確認して薄ら笑いを浮かべ、満足げに杖を出すと、

 生徒めがけて目覚めの魔法をかけた。

 直ぐに生徒達が顔を起こし、ハッとして隣近所の生徒達と薬が上手く出来た事を喜んだ。

 自分の教え方が良いのだと、スネイプは誇らしげにまたニヤリと笑うと

 自分の机に戻ろうとくるりと後ろを向いた。だが、その瞬間、

 「ススススス、スネイプ先生!!!」

 突然呼ばれて振り返ると、涙目のネビルの横でハリーが机に突っ伏したままだった。

 急いで近寄って様子を伺う。

 ”息はある。”

 だが眠りが深いようで、呼吸も浅く起きる気配が無い。

 先程よりも強い魔法をかけるが、ピクリとも反応しなかった。

 泣きじゃくりハリーの名前を呼び続けるネビルを怒鳴り散らし、

 グリフィンドールから50点を減点した後、スネイプはハリーを抱き上げ、医務室へと急いだ。

 医務室に着くと、一番奥のベッドに案内された。

 マダム・ポンフリーが、

 「まあまあまあ!」
 
 と、声を上げながらハリーの診察をする。

 「一体どうやったらこんな状態になるんですか?!」

 マダム・ポンフリーが険しい顔でスネイプを睨み、薬棚に急いだ。
 
 あれやこれやと引っ張り出しては首を振る。

 言葉無くその様子を見やり、深くため息をつく。そしてハリーを見る。

 どれ程に深い眠りに落ちているのか。

 息をしているのも不思議に感じるほど反応がない。

 ハリーは常に問題事に巻き込まれる。本人が望む望まぬに関係なく。

 スネイプはまたため息をついた。

 一通り薬品棚を物色したマダム・ポンフリーは、手に小さな小さな薬ビンを持って帰ってきた。

 ソレを見てスネイプは顔をしかめた。

 「やはり、ソレしかありませんか。」

 マダム・ポンフリーの顔もしかめられていた。

 「そうです。この薬でもポッターが目を覚まさなければ、

 もう、ダンブルドア校長にお伺いを立てる他ありません。」

 マダム・ポンフリはコップの水の中に薬を1、2滴おとした。

 薬が水に落ちると、水はパール色の白い液体に変わった。

 ハリーの上体をスネイプに支えてもらい、ハリーの口に薬を流し入れる。

 が、案の定、意識のないハリーは無意識でも飲み込む事は無かった。

 「まあ・・・どうしましょう、これでは・・・。」

 マダム・ポンフリーが困り果てて悩んでしまった。

 スネイプはそれを見て、心の中でひとりごちた。

 ”予想していなかった訳ではないがな・・・。”

 スネイプにはソレ以外に今は手も無いだろうと思った。

 その時、医務室に別の誰かが入ってくる気配。マダム・ポンフリーを呼んでいる。

 「これは私が飲ませましょう。アナタはあちらを・・・。」

 そう言ってコップを手に取る。

 マダム・ポンフリーは少し悩んだが、

 「でわ、お願いします。スネイプ先生。」

 不安げにハリーとスネイプを交互に見た後、カーテンをするりと抜け、出て行った。

 スネイプはベッド脇のテーブルに乗った薬ビンを見る。

 以前。そうスネイプがまだホグワーツの学生だった頃。

 1度だけこの薬を飲ませた人物が入た。日頃の恨みから、こらしめるつもりだった。

 それで自分に近づかなくなれば、それで充分だと思った。

 ”ジェームズ・ポッター・・・”

 彼は笑った。笑っていた。少しやつれた顔で。

 あんなに苦しんだ後に。苦しめた犯人の私に。

 まるで呪いの様だと思った。

 コップを口に運び、液体を含む。コップを置き、身をかがめる。

 あの日、自分に呪いをかけた彼と瓜二つの寝顔。

 スネイプはハリーを上向かせ口を微かに開かせた。口移しで薬を飲ませる。

 確かめるように少しづつ薬を流し込んだ。

 間もなく、

 『コクリ・・・。』

 ハリーの喉が鳴る。

 ”・・・飲んだ・・・。”

 スネイプは安堵した。あとはハリー次第だった。

 ハリーが薬を飲んだ後も、スネイプはしばし唇を離さずに居た。

 記憶の中。背伸びをして笑顔で自分に口付けた彼と、同じ形と感触の唇から

 離れがたかったから。。。

 


やっちゃった!スネ様やっちゃった!
この話は。。。。。。
ここまで来れば判りますか??
スネイプ×ジェームズです。本当は。
でも、ちょこっとしかジェームズ出てこないから微妙なんですね〜〜★